依頼内容を聞いたときの驚きが、忘れられない。
2023年10月23日取材 甲田智之
「石本商店のこだわりを伝えるよりも、
津山の観光スポットとか魅力を伝えるサイトにしてもらえたら」
思わず耳を疑った。
津山名物の干し肉や、牛の煮こごりを販売している「食肉石本商店」のWEBサイトである。にも関わらず、自社のこだわりよりも、津山の観光スポットや魅力を伝えたい、という。石本商店さんのことは、もともとInstagramで知っていた。投稿には食欲がおさえられない、おいしそうな肉の写真がズラリ。
投稿を見れば見るほど、「石本商店のこだわりや味を伝えたい!」と思う。ライターならだれだってそう思うはず。しかし、取材を進めていくなかでその考えは少しずつ変わっていく。石本商店さんが描いていたのは、ひとつのストーリーだった。牛肉を通して、津山の魅力をめぐっていくひとつのストーリー。
僕はそれに激しく共感した。「こんな考えがあったなんて!」
……と。そのまえに、津山と牛肉のつながりを知っておく必要がある。「津山と牛肉のつながりを教えてください」と尋ねると、食肉石本商店の3代目柳澤大蔵さんは「間違いがあってはいけない」というふうに、パンフレットを取り出した。
「ここに詳しく書いてあります」
パンフレットを参照にした「津山と牛肉のつながり」を前段として、石本商店さんがなぜ自社のこだわりよりも、津山の観光スポットや魅力を伝えたい、と思うのか。少しずつひも解いていく過程は、まさに驚きの連続だった。